能が終わっても拍手はしないで!
        ―拍手いや〜んの会―



"拍手いや〜んの会"は、「能楽堂では拍手をしない」を普及させようというキャンペーンです。観能マナー向上のため、皆様のご協力をお願い致します。



く聞かれる質問に「能の拍手はいつしたらいいの?」というものがあります。確かに、「ブラボー」の掛け声がかかり、何度もカーテンコールがあるクラシックコンサートや、見せ場で必ず「よッ、○○屋」と大向こうから声が飛び拍手が起こる歌舞伎などのイメージが頭にあると、能でも拍手をしなくてはいけないんだろうと思ってしまっても無理からぬことかもしれません。しかし、能は拍手が邪魔になる演劇なのです。

舞台の最大の特徴は、客席と舞台とを仕切る幕がないということでしょう。三間四方の舞台空間は、観客が客席に入った時から能を見終わって席を立つまで終始、暗転することもなく、観客の目の前にさらされています。ざわついていた客席が次第に静まり、やがてしずしずと橋掛リから囃子方が登場する・・・そう、「いつの間にか」舞台は始まっているのです。そして、今まで舞台上で演技をしていたシテ・ワキがなにごともなかったかのように退場し、地謡・囃子方も舞台から下がって、「いつの間にか」舞台の上には誰もいなくなっている。始まりもなければ終わりもないのですから、本当なら、拍手のしようはないのです。
能が終わった後、今まで見ていたあれは夢だったのかしら?・・・そんな錯覚にとらわれることがあります。その意味で、演能が与える印象は、まさしく「物象化された夢」だといえるでしょう。ワキが見ている夢を、観客の私たちも客席で追体験していることになるわけです。夢から覚めて拍手する人なんて、いませんよね?ああ、良い夢を見た、楽しかった、怖かった・・・そういういろいろな思いを心の中で反芻すればいい。能とはそういうものなのです。ただ、夢のように流れた時間の余韻に身を任せていればいいだけ。

すが、現実はというと、シテが退場する時に割れんばかりの拍手。ワキの退場の時、またパチパチ。そして、地謡と囃子方が引き上げる時、とどめの拍手。こんな具合にダラダラと拍手が続くのです。これでは、夢の余韻に浸るどころではありません。素晴らしい舞台を見た感動も、最後の最後でぶちこわしになってしまうのです。なんと悲しいことではありませんか。
ある能の会で、シテが退場する時に一部の観客から拍手が起こりました。普通なら、それをきっかけに皆が手を叩いてしまうのですが、その時はその拍手に乗る人はいなかったので、すぐに客席は静まり返り、結局最後まで拍手は起こりませんでした。素晴らしい舞台は拍手を寄せ付けないだけの力があるのだなぁ・・・と改めて感動した記憶があります。「能では拍手をしちゃいけないなんてこと、今まで知らなかった」という方も多くいらっしゃるでしょう。知らぬが故のマナー違反ならば、気付いた時点で改善していけば良いのです。能楽堂で隣に座った人が拍手をしていても、自分はしない。今後はそういう良識ある観客の方が増えて下さることを願ってやみません。





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